2005年09月03日

RNAの新発見!

このブログは学問ブログです。
めたかです。

というのは、ですねー。
今日の京都新聞、一面で
こんな記事が出ていたんです。

DNA配列の7割に役割
 理研、遺伝の常識覆す


これはねー、取り上げないといけないでしょう!
というのは、コレ
将来的には高校の生物の教科書が
書き変わってしまうような「大発見」に
つながるかもしれないんです。
そういう、重要な話なんで。

えっと、とりあえず
毎日の記事が、もう少し詳しいので
貼っておきましょうか。

RNA:遺伝子を起動 ”がらくたDNA”が大量作成
解説:RNA 生命解明へ新鉱脈 遺伝子の発現指令、糖尿病など新薬に道

でも、これ読んでも
普通の人は、あまり良く分からない
と思うんですよ。
(元村さんじゃなかったしね。)
なんで、ここで解説します。
と言っても
「ちゃんと分かるように」書くには
また、昔のほぼ日に書いたのくらい
長ーくなっちゃうので
さすがに、それをやる余裕はありません。
(だって、上記のって、すごーい手間かかってんだよ?)
ので、さらっと書きます。
まぁ、
「セントラルドグマ」については
今、少しずつ説明し始めていますので
そちらを楽しみにして頂いて・・・


###
まず。
分子生物学には
「セントラル・ドグマ(中心命題)」
というのがありまして、
これが、基本中の基本になってるんですよ。
今回の「発見」は
ひょっとすると、それが塗り変わるんじゃないか
という話なんです。
そう
根っこの根っこ、根本の根本、
根幹の根幹が、塗り変わるって話。
物理学で言うなら
ニュートン力学が塗り変わった
(相対論とか量子論によって)くらい
大きな話、なんです。

と言っても
それで「どのように塗り変わるか」は
まだ、全く分かっていません。
ただ
「塗り変わらないとイケナイ」って事が
決定的になった、というのが
今回の発見なんです。

(ですから、
 今後の分子生物学の説明については
 従来通りの「セントラル・ドグマ」で
 説明していくつもりです。
 ま、塗り変わると言っても
 全く別のものになってしまうのでは
 ありませんので。
 今までの理論を踏まえ、包含したもの
 になると思われますので、
 ご安心ください。
 ニュートン力学だって、
 今でも高校大学でやりますもんね!)


###
それで、この「発見」の具体的な内容は
追記部分に書いていきましょう。
(興味のある方は
 お読み下さい。少し長くて難しいです。)


###
まず、セントラル・ドグマについて
簡単に説明します。
『DNA』という物質が、
遺伝子の本体
なんですね。
その『DNA』は
どういうタンパク質を作るか、というのを
決めているんです。
タンパク質は、人では約2万くらいと
考えられています。
それだけの種類のタンパク質を
いつ、どこで、どれくらい作るか、を
決めているのが「DNA」だって話。
タンパク質は、様々な働きをする物質で
どんなタンパク質を作るか
を決める事で、生き物の色々な機能を決めている
それが遺伝子なんだって話です。

これが、『セントラル・ドグマ』の概要です。
こういう訳で
様々なタンパク質の働きを
1つ1つ決めていって
それで、生き物の色々な事を説明していこう
というのが「分子生物学」なんですが。

この、根幹の部分が揺るがされた
というのが今回の発見なんです。


###
で、上のセントラル・ドグマの説明では
1つ、抜かしていた事があります。
それが『RNA』の働きなんです。

セントラル・ドグマにおいては
RNA』は、
DNA』と『タンパク質』を繋ぐ
アダプターのような働きをしています。
それは、どういう事か・・・

遺伝子ってとても大事なものですよね。
だから
タンパク質を作るたびに
一々、『DNA』を参照にしていたら
その事で、DNAが傷ついたり
してしまうかもしれないですよね。

そうならないように
DNAの情報を使う場合は
まず、必要な部分だけ、コピーをとるんです。
その『コピー』の情報を使って
タンパク質を作るんです。

その『コピー』として作られるのが
RNA』なんですね。
RNA』は、『DNA』と非常に似た物質で
だけど、少し違うものです。
全く同じだと、原本とコピーの区別が
つかないですよね。
なんで、少し違うRNAをコピーに使う。

ただ、
RNAの働きは、実はこれだけじゃない
ってのが、最近のトピックなんですよ。
それは、また後述します。


###
で、今回の発見の説明をしましょう。

理研のプレスリリース
一応、コレを読んで理解できた範囲で
書きますね。
この研究発表の元である論文は
読んでない事をご了承下さい。


今までの「セントラルドグマ」では
DNA』には
様々な『タンパク質』を作る情報がある
という話でした。
ですが
『タンパク質』を作るにの必要な情報は
非常に長い『DNA』の中の
ごくごく一部だけなんですよね。
それ以外の部分は
イラナイ部分だって考えられていました。

だけど
今回の発見では
その「イラナイ部分」でも
コピーの『RNA』が作られている
という事が分かったんです。
DNA全部の中の約7割で
コピーのRNAが作られていたんです。

その『コピー』の中で
タンパク質を作るのに使われるのは
一部だそうです。
(数を見るだけなら半分弱、ですが・・・)
では、それ以外のものは、
いったい何に使われているんでしょうか?
それだけ多くのものを作っておいて
「何にも使われない」という事は
さすがにないと考えられます。
(そこまで無駄な事はしないでしょ。)
では、
どうしているのか?
まだ未知の「使い道」が
きっとあるに違いないんです。

それが、どういうものであったとしても
今までの「セントラル・ドグマ」に
大きな変更を強いるものになるのは
間違いないでしょう。
だって
今の所、使い道が分かっているより
多くのものが作られているんですから。


###
では、『RNA』は、
他にはどんな使われ方をしているのでしょうか?

最近分かってきた事で
注目されるのは
RNAiという現象です。

これは、元々は線虫という
小さな生き物で見つかった現象です。
線虫の卵に、2本鎖のRNAを注射すると
同じ配列の遺伝子の働きを止めてしまうんです。
類似の現象が
それ以外の生き物でも見られる事が
次々と発見されました。
メカニズムの研究も、着々と進められています。

ただ、
この働きは、タンパク質を作るのを止める
という事ですので
「タンパク質を作る」以外の領域のRNA
基本的には関係ない話なんですね。
ですが
RNAには、他にもまだ分からない
色々な働きがあるんじゃないかって
推測されている訳です。

(プレスリリースを読むと
 今までの『RNAi』のメカニズムでは
 説明できないデータがあるようですね。
 この辺は、論文を見ないと分からないなぁ。
 というか、実は、この辺りの研究に関しては
 あまりちゃんとフォローしていないんで
 どういう事をしてるか、
 推測できないし・・・)


###
以上が、この記事の解説です。
分からない点などありましたら
気軽に質問下さい。
あと
巡回先の「RNA新大陸の発見」にも
トラックバック、送っておきます。
(プレスリリースは
 ここ経由で見ています。)
posted by めたか at 01:08| Comment(2) | TrackBack(0) | 分子生物学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
高校時代、生物学なんてしっかりとやっているいう学校ではなかったので、今回の話はちと判り難いところはありますが、めたかさんの説明で「RNA」っていうのがどいうのか判りました。

というより、その存在すら知らなかったです。_| ̄|○

この記事の続編をまたお願いします。
Posted by 上々娘 at 2005年09月03日 03:52
コメントありがとうございます。
まぁ、「RNA」は、これまでは、
あまり注目されてこなかったものですので、
専門以外の方は、存在すら知らなくて当然ですね。

この記事の続編はありませんが、
分子生物学の説明は、今後も少しずつやっていきますので
良かったら読んで下さい。
Posted by めたか at 2005年09月03日 08:53
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